部下の能力アップ |
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目 次 | |
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目 次 |
1.部下を育てる
1.1 部下の育成は監督者の大きな仕事
1.2 部下の力量を評価する
1.3 部下の評価と査定
1.4 仕事の要求レベルの把握
1.5 部下との面談
1.6 部下をほめる
2.部下の教育訓練
2.1 訓練計画
2.2 訓練計画の実施
2.3 OJT
2.4 作業指導のやり方
2.5 技能訓練の評価
2.6 訓練結果の記録
2.7 部下の夢の実現
2.8 教えるは待つこと
3.ワークデザインとは
3.1 作業のワークデザイン
3.2 部下の夢
3.3 部下の夢の実現のための取り組み
4.5Sの定着を図る
4.1 5Sとは
4.2 5S定着は監督者(管理者)の問題
4.3 5Sの取り組み
5.整理と整頓
5.1 職場のワークデザイン
5.2 容器と荷姿
5.3 整理整頓のための容器や機器
5.4 整頓と荷姿
5.5 部品ロケーション
6.清掃
6.1 安全な職場とは
6.2 問題を見える化する
6.3 基準を維持するとは
6.4 設備機械類の清掃技術
6.5 清掃マニュアル
6.6 全員で職場を大切に守る
7.清潔は自分自身を高めること
7.1 模範となる監督者へ
7.2 率先垂範
7.3 監督者への道
7.4 自分の夢の実現
7.5 良き社会人へ
8.躾けは自分と他人との関わり
8.1 規則や約束事を共に守る
8.2 他人に迷惑をかけない
8.3 作業標準を順守する
8.4 5Sによる現場の改善
8.5 部下をほめる
監督者の役割の一つは、部下の育成であるとすでに述べました。ここでは、具体的な部下の育成と能力向上について考えたいと思います。
1.部下を育てる
作業者に代表される現場で働く人たちを監督者が育てる理由は何でしょうか?その一つは現場のものづくりの能力、すなわち「現場力」を高めること、もう一つは、作業者一人一人の夢を実現すること、よくいわれる「自己実現」を支援していくことにあります。
1.1 部下の育成は監督者の大きな仕事
現場のものづくりの力も結局は人(作業者)です。今は、いろいろな作業がこなせる「マルチ技能者」(多能工ということもあります)の時代です。職場のすべての作業者にいろいろな教育訓練を実施することは、どんな企業でも行っています。多角的な技能取得のほかに、職場の仕事に必要な国家資格、各種団体の認定する資格、企業の定める資格などの資格取得に挑戦できるような支援計画も作ることです。教育訓練計画には、目標や日程が必ず必要ですが、実際には計画通り実行されていないケースがISO9001の認証審査で指摘されています。職場で働く人たちの自己実現のためにも、監督者はそれを支援していくことが重要な仕事の一つです。
1.2 部下の力量を評価する
QMS(ISO 9001)に要求される人的資源について、部下の力量を評価して、業務の遂行に必要な能力を付与し、教育訓練を実施し、それを評価し、記録するという規定があります。部下の評価手法は、公平性と正確性が求められるので、各企業は評価基準や評価手法を定めています。
1.3 部下の評価と査定
作業者の成長と仕事に対する貢献度を測定するために、部下の技能評価は欠かせません。評価方法や評価基準は企業全体の部署間のバランスを加味して、担当する部署(例、人事部)で決める必要があります。
次の表は、監督者による職場の作業者の評価点数表の事例です。点数の査定に当たっては、その根拠となるのは、日頃の作業日報の記録になります。さらに日頃から、仕事の評価データや実績等を記録しておかなくてはなりません
部下の査定基準の例 ![]() |
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次にその一例を示します。
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<説明> I :指導受けながら作業ができる(未熟練作業者)
L:標準時間内で作業が自らできる(熟練作業者)
U:他の作業者の指導ができる(リーダークラス)
□:標準作業書が作成できる(監督者補佐クラス)
赤記号:本年度の訓練計画
個人別教育訓練の計画は、作業者個人の適性や将来の目標などとその企業の方針を踏まえて、個人ごとに中長期的視点に立って計画を立案します、具体的には、年度ごとに具体的訓練計画を立てます。
2.2 訓練計画の実施
監督者は、訓練計画に基づき、「訓練計画実施日程表」を作業者別に作成します。一般的にOJTで監督者が行ないますが、作業の内容によっては他の指導ができる者に任せることも行なわれています。さらに、技術者や他部署の専門スタッフなどに訓練の一部(例えば座学)を委託することも計画に織り込むようにします。
訓練日程表は、個人毎に具体的な内容と日程を記載しますが、ガントチャート(管理技術の項を参照)で、計画と実績を記載するようにすれば分かりやすくなります。
2.3 OJT
技能訓練はOJT(On the Job Training)で行うのが基本ですが、実施する訓練の内容により、技術者や管理者の支援を得ることも考えます。訓練を行うには、次のような基準書が準備されていなくてはなりません。
・作業に必要な作業要件表
作業の品質基準、必要な知識、求める技能、習熟に要する 日数、技能ランクなど)
・作業マニュアル
・QC工程表(品質保証に関するもの可)
・使用する材料、設備、治具、工具などの基準書類
・その他作業に関する標準書類
2.4 作業指導のやり方
作業者に作業を指導する場合、作業指図書(作業標準書など)を用いて行なうことが原則です。これは作業者達に同じ指導を行なうことであって、作業者によって指導する作業の方法などが違っていては、作業者は混乱します。作業者の器用さなど個性を尊重することは必要になりますが、標準作業の内容と異ならないようにします。
作業者に仕事を教える方法については、いろいろな参考書などがありますが、一般的な基本は知っておきたいものです。
第一段階:作業の内容を説明する
作業の目的や重要性、危険性など説明する。
第二段階:作業を自らやって見せる
作業の手順と作業の急所などやって見せる。
第三段階:作業者に作業をやらせる
作業をきちんと覚えているかやらせてみる。
第四段階:作業の出来映えをみる
作業動作や品質など不具合点など教える。
第五段階:作業状況を監察する
教えた後も時々作業の様子を監察する
2.5 技能訓練の評価
作業者の訓練が終了時や定期的に技能訓練の評価を行います。訓練の評価は必ず記録保存して、その作業者の経歴として社内文書にして上長に報告するようにします。また、国家資格の取得、社内の技能検定などの受験を促し、一層の技能アップを図っていくことも大切です。なお、評価結果を時系列に比較して、部下の成長を把握し、さらに次の計画や指導に反映していくようにします。
2.6 訓練結果の記録
OJTなどの訓練の結果、監督者の定めたレベルに達すれば合格とする。この結果は正確に記録しなければならない。また、合格レベルに達しなかった場合、その原因を分析して、次年度の計画に反映する。作業者の技能が向上すれば、人事部における「昇任」の資料にもなるし、賃金の「昇給」などに反映されなければならない。「努力すれば報われる」ように、企業は積極的に取組むことです。
2.7 部下の夢の実現
部下の持つ夢を実現させることが監督者の仕事の一つです。夢の持てる会社や職場にすることが経営者や監督署の役割であると考えています。部下の夢を実現させるために、監督者は何をすべきかを考えていくべきです。「夢の持てる職場」は監督者自身も同じです。部下とともにその夢向かって行動していく取り組みが期待されています。
2.8 教えるは待つこと
海外で仕事をして先ず感じたことは、「待つ」心です。海外工場では、現地の技術者や監督者又は作業者に教えることが仕事になります。しかし、なかなか教えた技術や技能が実行できません。迫ってくる時間(日程)に焦りながら、つい手を出すこともあります。その方が早いからです。例えば、作業マニュアルを作成する時、自分で作成した方がすぐできるからです。現地の技術者は当然未熟(未経験)ですから、時間を要することになります。ここで手を出しては、現地の人たちのためになりません。じっと我慢することです。この気持ちがないと技術指導はうまくいきません。焦らず、相手が成長する(出来るようになる)のを待つということが教える基本であることを学びました。
3.ワークデザインとは
現在のやり方を白紙にして、作業(組立作業や加工作業などの仕事を指す)のあるべき姿や職場のあるべき姿を描いて、その実現に取り組む手法が、ワークデザイン(Work Design)と呼ばれています。
ワークデザインの考え方は、すべての仕事にも適用できます。現状にとらわれることなく、仕事に夢、理想的なあり方を描いて、それに向かって何を行うか、どんな行動をとっていくかを考えていくことにあります。
3.1 作業のワークデザイン
標準作業を作成する場合、作業のワークデザインの考え方を取り入れます。すなわち、その作業の理想的な方法、あるべき作業の方法を先ず考えてみることです。しかし、実際には、いろいろな制約条件がありますから、その範囲で、最も効果的な方法、効率的な方法を考えていくことになります。制約条件とは、作業場所、部品の置き場、工程の流れなどがよくある制約条件になっています。
3.2 部下の夢
部下の一人ひとりは、何らかの将来の自分の夢(ワークデザイン)を持っています。今明確でなくとも、ぼんやりでもこうありたいという希望が、夢があるはずです。監督者は部下が持つ夢を知り、その実現のために協力していく取り組みをしていかなくてはなりません。部下がどのような将来の夢を持っているのか、明確でなくとも何かしらの夢をもっているのかをお互いに話し合うことがスタートになります。
3.3 部下の夢の実現のための取り組み
部下の自己実現を満たしていくために、部下の能力アップ計画を立案していきます。当然部下との話し合いを持たなくてはなりません。半期に一度、計画の達成度や改善すべき事項などを確認していきたいものです。
4.5Sの定着を図る
職場の活性化と部下の育成の手段として、5Sの定着を図る活動が望まれます。
4.1 5Sとは
監督者が職場の5Sを定着させることで職場のレベルをより一層高めることができます。5Sとは、よく知られているように、整理、整頓、清掃、清潔、躾けのことを意味します。基本は、昔からよくいわれているように整理、整頓と清掃です。「使ったら元に戻す」「探しまわることはしない」が5Sのはじまりです。この2つは関連がありますが、職場でも家庭でもどこでもよく起きていることです。
4.2 5S定着は監督者(管理者)の問題
ある中小企業の社長から「5Sが定着しない、自ら率先して指導したが、すぐ元のように戻ってしまう」と嘆いていました。これは作業者の問題でしょうか?実は5Sが定着しないのは、管理者や監督者の問題であるという認識が必要です。「そこの置くな」といっても作業者からみれば、そこに置く理由があるのです。こうしろ、ああしろといっても、それができないのはその原因があるという考え方をしなければならないということです。いい換えれば、作業者と一緒になって取り組むことが必要だということです。
4.3 5Sの取り組み
(1)整理とは
職場の片隅には、ほこりの被った部品や材料、錆びた機械の部品、いろいろな資材の断片などさまざまな物が置かれています。整理とはこれを「今必要なもの」とそうでないものを区分して、今使わないものは、廃棄(処分、捨てる)することです。捨てるのはもったいない、将来使える、使うだろうと保管することが問題になります。このような判断は、作業者にさせるのではなく、監督者が指示することです。職場で今使わないものは置かないことに徹しなければ、職場はごみの山になってしまいます。
(2)整頓とは
使うものは、置き場所を定め、皆にわかるようにすることです。工具など繰り返し使うものは、使ったらもとに戻すこと(ルール)です。このルールを常に守るようにしていくのが「躾け」になります。作業に使う部品や材料の置き場所は、定位置を定めることですが、監督者と作業者と話し合うことや作業者の意見を聞くなどすることが望まれます。標準作業書には、部品の置き場所を規定することも一案です。置き場所には線引きや名称、番号を記載するなど工夫も必要です。職場の皆に分かるようにすることがその趣旨です。
整頓では、部品の荷姿、部品容器、部品棚、パレット類、工具箱、工具棚など様々な準備が必要です。この工夫によって、作業の効率、品質などにも大きな影響を与えます。
(3)清掃とは
職場の安全を確保するのが清掃です。作業場や通路に散乱するごみ、油脂類、鉄片、材料片、木片、段ボール片、紙くず、保護具類など様々な不要物が落ちています。これらは、主に運搬中や作業などで落下散乱するものです。さらに、作業中に発生するものもあります。これらの原因を調査して、それを防止することも重要な改善項目です。
清掃は必ず行わなければならない仕事ですから、必要に応じて作業中に行うことや、終業前5分間は清掃の時間に規定するとか、終業後10分間は清掃時間にあて、残業扱いとするなどすべきです。これは、工場長や監督者の裁量で行いたいものですが、全社的な規定をすることも考えます。
なお、機械、治具や工具など作業に直接かかわる清掃は、作業標準書に具体的にその方法を記載しておきます。
(4)清潔とは
清潔な職場、清潔な機械などといわれるように、清潔の意味には、きれい、美しい、清らかといった感情が含まれています。これは、整理、整頓、清掃(以下これを3Sという)が行き届いた状態を表しているといえます。「清潔な人」のように人にも使われます。このように、清潔は、5Sがしっかり行われている状態をいうことです。したがって、「清潔にする」とは5Sを行い、それを実践していくということになります。
(5)躾けとは
躾けは、「職場のルールを守っていく」ことを表します。職場のルールは、会社の定めた規則、作業の規定、職場で定めた約束(朝礼、終礼、報告、連絡、相談など)などいろいろなルールがあります。このようなルールをきちんと守って行動することが求められています。さらに、躾けには、指導と実行が含まれています。監督者だけではなく、従業員同志などによる躾けもあります。
5.2 容器と荷姿
2Sを実現することは、材料、部品、仕掛品などをそのまま床置きするのではなく、どんな容器に、どんな荷姿で収納するかを決めることでもあります。荷姿は、作業しやすい並べ方、運搬しやすい積み方、傷や変形が生じない積載のやり方などを考えなければなりません、容器は、いろいろな容器が市販されており、購入することができます。また、特殊な場合は、容器の設計と製作も行います。
5.3 整理整頓のための容器や機器
整理整頓に当たって、よく使われる容器や機器の例を次に示しておきます。特に容器類は、さまざまな形状、種類や大きさのものが販売されているので、よく調査してみることです。同時に検討しなければならないことは、荷姿や容器に収める数量です。材料や部品の置き場所の面積や位置(置き場所)も重要な選定要素にもなります。
1 | 一般的な部品容器(バケット)の例です。多種多様な容器が市販されています。大きさは、部品のサイズや置き場所の制約、荷姿などから決定します。外注メーカーから納入される部品は、同一の容器を使用することで運搬コストの節約になります。 | ![]() |
2 | 標準的な柱パレットです。小型の容器や段ボール類の積載のほか、重量部品の搬送にも使われています。柱パレットは上部に、3段4段の積み上げが倉庫では行われます。 | ![]() |
3 | これは、平パレットにガードをつけたパレットです。部品や段ボールの落下を防止するのが目的です。特に軽量の場合は、高く積載することで、運搬効率を上げる意味があります。 | ![]() |
4 | 標準的な部品棚です。高さ、横幅などの大きさは多種多様で、職場にはよく使われています。特に、仕切り版の位置が調節できるので、大きさの異なる部品などを自由に配置できます。場所の制限があるとき、立体的に使用できるのが利点です。、 | ![]() |
5 | これはローラーコンベヤーです。小型のサイズは、職場の容器の移動によく使われています。傾斜をつけると重力で自動的に容器が移動します。 | ![]() |
6 | 右図の上のコンベヤーは、小型のローラーを多数個並べたコンベヤーです。下図は円筒タイプのローラーを動力駆動により回転させ、容器を自動で送ることができます。(動力装置のないものもあります) | ![]() ![]() |
7 | 職場の通路や専用搬送ラインを利用した自動搬送機器の例です。自動搬送機器の上に、部品容器を積載して所定の指示した場所に搬送されます。 | ![]() |
8 | 職場の天井を利用した天井コンベヤーは多種多様なものがあります。比較的軽量な部品の搬送は、図のようなチェインコンベヤーが使われています。このようなコンベヤーは、職場から次工程や倉庫に送るとか、倉庫から職場の作業ラインへ搬送するなどの使い方がされています。 | ![]() |
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5.4 整頓と荷姿
必要な部品(材料その他すべてのものを含む)を必要な時に、必要なだけ取り出せることができるようにするのが「整頓」です。したがって、整頓とは「荷姿」を工夫することでもあります。荷姿の検討に当たってのポイントは次の通りです。
@傷、打根、変形など起こさないこと
A作業者が部品等を取り出しやすいこと
部品の反転、方向変更、持ち直しなどが起きないこと
Bできるだけ空間が少ないようにして数多く積載できること
C運搬中に荷崩れ、変形、傷、落下など起きないこと
D容器からはみ出さないこと
5.5 部品ロケーション
右の図は、多品種少量生産タイプの作業場のレイアウトです。図に示す部品置場の場所にどのようにして部品を配置するかを決める必要があります。監督者は、職場の作業者達といろいろ検討を行います。作業者の知恵も活かすことがポイントです。2Sの実践活動です。どの部品をどこに、どのように配置するか、取り出しやすさ、供給のしやす空き箱の外出し、完成品の置き方など2S活動を行って定着化を推進していきます。
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6.清掃
職場の安全を確保するのが、清掃であると上に述べました。同時に危険な職場にならないように改善することも清掃活動でもあります。
6.1 安全な職場とは
職場の作業内容により発生する粉塵や有害ガス、作業中に落下したボルト、ナットやビス類、こぼしたオイル、作業から生じる鉄片、切りくず、設備や機械から発生した油脂類、機械部品のなどが散乱していますから、これらを完全に除去することが安全な職場にする目的です。
6.2 問題を見える化する
職場のごみ、ほこりの除去や機械類の清掃によって、その下に隠れていた異常事態や初期的な危ない状態が目に見えるようになります。このように清掃によって職場の問題を発見することができます。5S活動自体も同じことがいえます。
6.3 基準を維持するとは
清掃は、職場や設備などを初期の状態に戻すこと、定められた基準を維持することでもあります。設備は時間と共に経年劣化が起こります。例えば、錆び、緩み、ガタ、詰まり、摩耗、傷、変形などの現象が現れます。外観的な現象は、清掃活動によって異常を発見でき、対策、改善が行われます。なお、内部的な損耗、性能不良、精度不良、機能不良などは、定期的なメンテナンスや予防保全によって防ぐ必要があります。
6.4 設備機械類の清掃技術
清掃活動の中で、重要な設備や機械類、治具工具の清掃は、大変重要なことです。
(1)設備や機械の清掃
設備(ロボットや搬送装置なども含む)清掃は、危険も伴うので慎重に行う必要があります。必ず「清掃マニュアル」を作成する必要があります。作業者が清掃する手順、方法、点検チェックシート、結果の処置や報告などを明示しておくことです。特に、行ってはならないことをしっかり指示することです。例えば、清掃時にハンドルを回したり、バルブを操作したり、何かを操作することは、必ず指示しておかなくてはなりません。
さらに、設備の内部に入って、点検や清掃を行う場合、必ず安全措置を講ずることを事前に教育することです。場合によっては、資格を定め特定の作業者に実施させるなどの配慮が必要です。
(2)治具の清掃
治具点検と同様に、清掃も具体的に清掃方法を指示をすることです。この場合、電気やエヤー動力を使用している可動部分がある場合は、安全を確保する必要があるので、点検マニュアルを使用させるようにします。
(3)掲示板の掲示書類の清掃
職場に掲示されている作業マニュアル類、指示書、注意書きなど文書の清掃も行います。特に放置されている文書は、張替、廃棄、交換など行います。
6.5 清掃マニュアル
監督者は、作業マニュアルの作成の予行演習として、職場のリーダークラス(基幹要員)に清掃マニュアルを作成させるとよいと思います。簡単な注意書き程度でもよいのです。具体的内容として、事前の準備や注意事項、使用する清掃道具、用具、清掃手順、清掃作業内容、結果の確認、異常処理、報告事項などが上げられます。この内容について、作業員全員で検討するなどして改訂変更をしていくとよいマニュアルが出来上がってきます。
6.6 全員で職場を大切に守る
清掃によって、職場の安全が高まります。例えば、職場で発生する粉塵の発生や浮遊などが少なくなり空気もよくなります。さらに、ムリ、ムダが少なくなり、作業の効率や製品の品質向上に大きく寄与することは間違いありません。
7.清潔は自分自身を高めること
清潔は、別の言葉では「高潔」であり、「徳のある人」を意味しています。優れた人材に育っていく努力を期待する言葉であり、行動を指していると私は思っています。
7.1 模範となる監督者へ
作業者の清潔活動(5S)を高める方法は、監督者にあります。監督者が自ら「身をもって」模範となることが求められます。監督者が常に関心を持ち、部下とのコミュ二ケーションが大切です。部下は、監督者の行動をしっかり見ていますから、監督者自ら部下の手本となることです。
7.2 率先垂範
監督者が先ず実践していくことが「率先垂範」です。先ず3Sを自ら実行することが定着につながります。ただ、注意しなければならないことは、こうしろ、ああしろと命令調で行うことは失敗します。相談調であるべきではないかと思います。部下と共にあるという姿勢をお勧めします。
7.3 監督者への道
5S活動を通じて作業者が得るものは、将来監督者になるための第一歩といえます。自ら5Sを実践出来る者は、他の模範であり、実践できる能力を備えることになるので、職場のリーダーであり、将来の監督者に育っていくことになります。5S活動は、部下の能力を高め、部下を育てる監督者の役割でもあります。
7.4 自分の夢の実現
職場で働く作業者は、何のために働くかといえば、生活のためであり、自分自身や家族が生きていくためであるというのが一般的な答えでしょう。しかし、今までに述べたように作業者には、それだけではなく、「自分の夢」を持っています。監督者はこの夢の実現のために部下の支援を行うことです。作業者は仕事を通じて、自分自身の夢を実現することが、職場で働く原動力であることを監督者はよく理解していなければなりません。
7.5 良き社会人へ
5Sの実践は職場のモラル(Moral)の向上につながっています。最近問題になっている品質のデータをごまかしたり、法律で定められている規定を守らず、お客様をあざむくようなことが起きていると報じられています。法律や会社の規定などをしっかり順守すること、すなわちコンプライアンス(Compliance)が求めれれています。
8.躾けは自分と他人との関わり
躾けとは愛の表現の一つであるといわれています。愛のない躾けは、言葉の暴力にもつながりかねません。最近「躾け」と称して自分の子供に暴力(体罰)をふるい、死亡させる事件も起きています。
8.1 規則や約束事を共に守る
職場の躾けとは、職場のいろいろなルールを守ることを意味します。ルールを無視した行動は、躾がなっていないと評価されます。躾けは管理者(部課長)や監督者の問題でもありますが、従業員同士の問題でもあると考えています。規則や職場の約束事を無視する作業や行いは、従業員同士で改めることが5Sの定着です。
8.2 他人に迷惑をかけない
日本では個人個人には自由が保障されていますが、自分勝手な自由はありません。その基本は、「他人に迷惑をかけない」という思いが必要です。職場のルールを無視した行動は、その本人には、何かの原因(悩みなど)があるはずである考えるのが一般的です。何の理由もない場合は、病気であると判断できます。病人は、現場で働くことはできません。
8.3 作業標準を順守する
標準作業をきちんと実施していくことは作業者の義務ですが、実際には必ずしもそれが守られていないケースがよくあります。作業者が標準作業を守っていない場合、その理由を尋ねる必要があります。作業がやりにくい、もっと良い方法がある、正しい方法を教えなかったなどいろいろな原因があるはずです。監督者はその作業方法を確認して、さらにより良い方法であれば、作業の改善と標準書の改訂を行います。
8.4 5Sによる現場の改善
どんな職場でも、さまざまな問題が発生しますから、そこに改善という取り組みが必要です。すでに述べたように、5Sは職場の改善の第一ステップですから、全員で取り組む活動を指針としていくことです。なお、躾けに当たって特に注意を要するのは、「ハラスメント」(Harassment)です。ハラスメントは、苦痛とか嫌な思い、苦悩などの意味ですが、最近躾けの指導に当たって、上司によるパワーハラスメント(パワハラ)、セクハラなどが指摘されれています。注意すべきことです。
8.5 部下をほめる
躾けは「叱る」イメージが強いですが、「ほめる」ことに気を配ることです。少しでも良い行動、よくできた点など部下をほめることによって部下の能力を伸ばすことであるといわれています。仕事がうまくいかない、遅れる、成果が出ないなどその責任を追及しがちですが、少しでもよくやった点を見つけてほめることが結果的によい効果があると思います。部下の成果が上がらないのは、監督者の自分にも責任の一端があると思わなけれならないのです。
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