品質に関する知識 |
はじめに | |
目 次 | |
初任監督者の心得 | |
監督者の役割 | |
生産の知識 | |
作業の知識 | |
部下の教育 | |
品質の知識 | |
QC7つ道具 | |
コストの知識 | |
固有技術 | |
管理技術 | |
各種の計算式 | |
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目 次 |
1.製品の品質とは
1.1 品質とは
1.2 品質特性
1.3 品質のバラツキ
1.4 何故バラツキが起きるか
1.5 公差
1.6 検査規格
1.7 ロット検査
2.品質の作りこみ
2.1 4M
2.2 QC工程表
2.3 不良は何故発生するか
2.4 部品付着のゴミ
2.5 品質改善
2.6 品質保証
3.統計的品質管理とは
3.1 データの層別
3.2 サンプリング
3.3 母集団とは
4.品質改善
4.1 不良品を作らない
4.2 不良品を流さない
4.3 データの偽装問題
5.職場の問題解決手法
5.1 現在の起きている問題の解決
5.2 不良低減活動
6.ポカヨケ
7.QC7つ道具
8.初期品質の確保
8.1 新製品立ち上げ品質
8.2 新設備の立ち上げ
8.3 立ち上げ段階の人材育成
8.4 初期流動管理とは
8.5 習熟について
8.6 外注部品の品質改善
9.QCサークル活動
9.1 QCサークルとは
9.2 QCストーリー
9.3 QC勉強会の実施
9.4 QCサークル事例発表会
9.5 品質意識
10.品質マネージメントシステム
10.1 認証における監督者の役割
10.2 内部監査
10.3 軽微な不適合の問題
10.4 作業者の作業に対する取り組む知識
10.5 作業者の力量
10.6 監督者の力量
なお、品質に関する内容は、管理技術の「品質管理」の項でも述べてありますので、参照してください。 |
1.製品の品質とは
企業において、「安全」の次に大切な取り組みは、「品質」であることはいうまでもありません。日常の生産活動で、どの企業でも不良品の発生(加工不良、組立精度不良など)が起こります。現場では、できるだけ不良ゼロにするために、懸命に努力しています。監督者として、どんな取り組みをしていくべきかを考えていきます。
1.1 品質とは
製品の品質とは、何でしょうか?品質に関する定義はいろいろ説明されていますが、私は「製品の持つ働きや役割」であると思います。具体的には、その製品をお客さまが使うとき、果たすべき機能や性能のほかに、安全性、耐久性や外観的な美しさなど製品によって多岐多様なものがあると思います。製品の品質は、設計段階で決める(設計品質ともいう」)ことですが、実際に生産現場で作り出される品質(製造品質ともいう)もあります。
1.2 品質特性
監督者として知っていなければならないことは、その製品の品質特性です。具体的な例として、長さのような寸法、強さ、ボルトナットの締め付けトルク、熱処理硬度、塗装の傷、凹みや厚さ、外観の隙間や段差の寸法など具体的な数値で表示できるものをいいます。官能検査による特性(滑らか、ハイライト、艶、カラーなど)もありますが、なるべく数値化することが望まれます。
1.3 品質のバラツキ
製品の品質は、一定でバラツキのない製品が理想的ですが、残念ながらいろいろな原因で品質のバラツキが生じます。このバラツキが許容される範囲であれば合格ですが、一定の限度を超えたバラツキが生じるとその製品は不合格となります。不良率はこの不合格の割合を示すものですが、不良率はその作業工程にいろいろな問題が存在していることを示しています。
1.4 何故バラツキが起きるか?
(1)工程設計条件
製品をつくるには、設計図面(CAD図面)に基づき、製造工程を設計(工程設計)します。製品加工や組立の手順とその条件が設定されています。具体的に記載されたものが、「QC工程表」ですが、記載される条件(項目)もたくさんあります。例えば、気温、湿度、電圧、電流、振動、作業者の技能、設備保全や治具金型類の損耗限度など少なからず製造品質に影響を及ぼす条件が無限といってよいほどあります。このような条件をすべて管理しなければなりませんが、実際はなかなか困難です。品質に大きな影響を与える条件はQC工程表に記載することが必要です。
(2)バラツキの発生原因
例えば、生産数量にしたがって、治具や金型は少しずつ摩耗して、製品の寸法精度が変わってきます。したがって、厳密にいうと同じ寸法の製品は出来ないといえます。これがバラツキの始まりです。寸法の少しずつ違った部品を組立した製品も寸法のバラツキが起こります。また、作業者が変わることによってもつくられる製品にもバラツキが発生します。このように、製造工程で製品のバラツキを起こさせる原因は、無限にあるといえます。このことをよく理解しておく必要があります。長い間、現場の技術者の経験として、つくられる製品は生き物のように変化することを実感したものです。
1.5 公差
製品の設計において、その製品の性能や機能を果たすために許される最大寸法と最小寸法設定します。その差を公差(設計公差)といいます。例えば、95±0.05のように指示された場合、この±0.05が公差(許容されたバラツキ)ということになります。さらに、設計公差とは別に製造公差を設定することがあります。これは、設計公差から外れると不合格になるため、その設計公差内で製造できるように公差を定めたものです。一般に、製造公差は設計公差より厳しい公差となっています。そのほか、製造上や技術的な理由などから、製造公差を定めることがあります。
1.6 検査規格
「検査規格」は、その製品の合格、不合格の判定のために決められた寸法の最大値と最小値です。例えば、95±0.01のように示されます。さらに、生産工場では、加工や組立工程の途中で仕掛品の検査を行います。これを工程検査と呼んでいます。工程検査は、その工程に定める検査規格の寸法が公差外(規格外ともいう)となれば不良品となります。検査規格は設計公差を基本として製造工程能力などから決められます。製品のバラツキを検査規格内に入るようにして製品をつくっていくことが現場の力といえます。
1.7 ロット検査
製品は全数検査して、合否を決めることが一般的な手段ですが、数量が多くなるとその検査は不可能です。したがって、製品ロット全体の中から、一定数の製品を抜き取って検査し、その結果からそのロット製品全体の合否を判定する方法を取っています。この方法は、統計的な手法を用いて行われるので、そのルールを守る必要があります。
2.品質の作り込み
「品質は工程で作られる」ということわざがあります。検査で品質がつくられることではないということをいっていることですが、全数検査を行うことによって品質を保証すると考える企業は少なくありません。品質を工程で作りこむには、工程が正しく管理されていなくてはなりません。
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2.1 4Mとは
工程で品質を作りこむ要素には4Mがあります。すなわち、作業者:Man、機械設備:Machine、材料:Material、加工方法:Methodの4つのMです。製造工程では、この4Mに関する標準が定められて、標準で定めたとおり正しく実施されることが必要です。工程内の不良発生や次工程などからのクレームなど品質問題が起きた時、この4Mの確認は解決への手掛かりになるでしょう。
2.2 QC工程表の作成
製品の持つべき品質(設計品質)を具体的に実現するために、QC工程表を作成することが一般的に行われています。この工程表には、生産工程と品質特性を明確にして、その管理方法などを具体的に計画したものです。この工程表は、設計部門や製造部門などとと打ち合わせするなどして、技術者が設計品質を具体的に実現していく方法や工程を定めたものです。
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なお、工程の具体的な内容を示す場合に、さらに詳細な工程表を作成する場合があります。例えば、組立工程表、塗装工程表、熱処理工程表などです。名称や呼び名は企業によって異なっています。
2.3 不良は何故発生するか
不良とは、バラツキが公差よりはみ出ることですから、何故バラツキが大きくなったかを検討することになります。バラツキによって、ものづくりで不良が出るのは、加工や組立工程の条件、材料、部品、作業者、設備機械などが常に変動、変化するからです。加工や作業に設定された標準条件を守ることは当然ですが、標準外の状態が生じたときに、どう対応するかです。
2.4 部品付着のゴミ
現役時代、溶接作業中の部品に相当のゴミが付着しており困ったことがりました。このゴミを取らないと溶接がうまくできません、溶接不良を起こします。このように、材料や部品にたまたま目につくゴミが付着していた時どうするかです。作業書(作業マニュアル)には記載されていません。この場合、作業者の判断でそのまま使用するか、除去して使うかになります。また、作業者が気が付かない場合は、そのまま製品加工され公差外れの不良品となるかもしれません。優秀な熟練作業者になると、このような変化に気が付き、適切な処置を自ら取っています。何か異常を発見したときは、監督者に報告するという定められた行動をとっていくことは当然です。ゴミの付着のため、除去することが必要なら標準作業に組み込むようにします。
2.5 品質改善
品質改善は先ずこの公差外になった不良品を防ぐことが、改善の始まりであるといえるでしょう。公差外となったその原因を突き止め改善していくことが第一歩です。原因を突き止めるために、「何故?」「何故?」を5回繰り返してみることだと大野耐一氏は著書に述べています。問題点の分析には、特性要因図、ヒストグラム、管理図など使い、かつデータによる現状把握と改善をしていくことに努力していきたいものです。品質向上は本当の原因を掴み、その再発防止の対策をとることができるかどうかにかかっているのです。
2.6 品質保証
ある企業の品質管理の理念として、「当社はお客様に対して十分に品質が保証された商品を提供する」ことを掲げ、これを実現するために全社員が取り組むことを宣言していました。お客さまが満足する製品をつくること、これをすべての製品に品質保証する活動が企業に求められています。これは、作業者はもちろんすべての従業員が品質知識や技術技能を高め、いろいろな問題の解決、改善に取り組まなくてはならないということです。
品質保証は、製品に設計(図面や仕様書など)の要求する品質を確実に実現することです。そのためには、製造工程や作業標準などが正しく守られていること、品質標準が守られていることを確認し評価して問題点を改善していく取り組みです。品質保証が不十分な製品は、お客様からクレームとなって現れてきます。
3.統計的品質管理とは
ものづくりの品質管理は、統計的品質管理とも呼ばれており、製造工程のデータを活用して、統計的な処理を行って品質管理を進めていく手法です。これをSQC(Statistical Qualty Control)と呼んでいます。QC7つ道具もこのSQCに基づくものです。QC7つ道具は別項で述べてあります。
3.1 データの層別
先ず知っておくことは、「層別」の考え方です。これは似たようなグループを一つのまとまった集団として区別する考え方です。現場のデータを記録したり、その結果を分析する場合、例えば、作業者別、機械別、材料別といったように、同類(同じ層)のデータを扱うことが必要になります。この層別がしっかりできないと、いろいろなデータが混在することになります。専門的な用語でいうと「母集団が異なる」ことになるからです。現場で起きるいろいろな問題を解決する場合でも、この層別して分析するというの考え方は不可欠です。
3.2 サンプリング
加工や組立工程からその工程の加工品や組立品を抜き取ることをサンプリングといいます。よくいわれる「サンプルを取る」ことです。大切な点はサンプルを取り方を決めておかなくてはなりません。通常はQC工程表に記載します。又は作業標準書に書いておきます。
<参考> ・サンプリング方法
@ランダム(無作為)で抜き取る
A定時抜き取り例:9時、11時、13時(2時間毎に)
B生産数で抜き取る例:100個目、200個目のように
・サンプル数は、一般的には1〜5個ですが、データの内容や使用するQC道具で決めます。基本はランダムサンプリングであるので、一つのロットの中からサンプルを取ります。
なお、完成製品の品質保証のための抜取検査は、JISZ9015等で決められているので、検査部門の検査基準書に基づいて行なう必要があります。
3.3 母集団とは
データを取り扱いする場合、母集団という概念があります。これはデータをとる生産品全体の数量やサンプルを取る製品の全体の数量を母集団といいます。サンプリングは、その母集団全体を推測するために、その母集団の中から一部の製品を取り出すことであるといえます。したがって、偏ったサンプリングや作為的なサンプリングは、正確な母集団をあらわさないとことになります。
上図に示すように、サンプルから母集団のバラツキや平均値を推定することになります。また、データから管理図を使って工程の解析や工程の管理を行うことになります。
4.品質改善
品質問題は、先ず「不良品を作らない」ことです。何故不良が発生するのかを考え、その防止を図ることにあります。次に、不良品をお客さまに渡さないことです。これを不良品の流失と呼びます。さらにクレームを出さないことでもあります。クレームは。お客様が満足していない商品ということになりますから、設計問題も含まれます。
4.1 不良品を作らない
不良品ができる要因は無限にあるといえますが、どんな作業でもおこりますから、監督者は気が抜けません。下記の表は、よくある不良発生の現象や要因です。
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不良が発生する要因は、さまざまですからその対策も無限であるといえます。ただ、大切なことは、再発しないようにしていくことが重要です。二度と同じ過ちは繰り返さないことを徹底していきます。
4.2 不良品を流さない
(1)基本は不良品を作らない
ものづくりでは不良品を作らない、これは当然のことです。不良品が出なければ、次工程やお客さまにも流れないことになります。ただ、これは完全に守れないとなれば、どうすれば次工程に流さないようにするかです。
(2)作業者の品質確認(工程内検査)
熟練作業者は、自分の作業が正しく行われたどうかはすぐわかるものです。品質確認を行いながら作業をこなすのです。逆にうまくできたか、正しく実施できたかわからないようでは熟練作業者とはいえません。したがって、監督者は初心者や未熟練作業者の仕事は、しっかり観察し、指導することが必要です。目が届かないときは、隣の熟練作業者に監視と指導をさせることも必要です。さらに、監督者は作業中に不良が発生したら、すぐライン停止や作業ストップさせる仕組みを作ることです。このような異常時には、すぐ応援に駆け付ける作業指導員(リーダー)も考えます。作業者は、自分の作業に責任を持ち、作業の結果の品質確認を行うという習慣をつけなければなりません。
(3)工程検査(検査員による検査)
ライン作業やロット作業で、検査員(検査を行う作業者)による検査を行う場合もあります。ある企業では、チェックマンと呼び巡回検査を行い、製品の品質確認を行うものです。不良品にはチェックマーク(赤ペンや赤札など)を付けるほか、作業者に知らせることも行います。修正指示などは、監督者が当然行います。
(4)中間検査(工程間の品質確認)
組立製品を次の工程、例えば塗装工程に、あるいはメッキ工場に、表面処理会社などに送る場合、組立製品の検査を行います。この場合、製品の完成ではなく、途中の工程ですので、検査を省くこともできますが、製品によってはこのような工程間の検査を実施することもあります。
(5)製品検査(完成品検査)
製品の完成検査は、納品先やお客さまに品質保証の一環として通常行われています。納品先の納入条件として求められることが多いと思います。本来、製品検査やその他の検査作業は、行わなくても品質が保証できることが理想ですが、その基本は「不良品は作らない」ことにつきます。この高い目標に向かって、日常監督者は努力しなけらなならないということになります。
4.3 データの偽装問題
データを故意に変更することは、禁じられています。不合格になった製品を合格品として、お客さまに納品した問題が起きています。よくいわれる「データの偽装」です。問題が発覚したため、その製品の交換が必要になり、企業に莫大な損害が発生しました。これによって、その企業の信用は低下し、場合によっては倒産する事態も起こります。決して行ってはならないことです。
5.職場の問題解決手法
品質改善とは、品質の向上のことを意味しますが、職場で起きているいろいろな問題の改善と職場の不良率低減などの改善が行われています。
5.1 現在の起きている問題の解決
おきているいろいろな問題や課題について、次のような問題解決のやり方がよく使われています。
(1)問題解決手法
次のような手順で問題の解決に取り組みます。
@現状の正確な把握
現在の不良の内容をデータで把握することから始めます。何時、どこで、どのような不具合が起きているか、データの層別を行って状況を正確に把握します。そのためには、出来るだけ数値で把握することです。
A原因の分析
不具合の原因を追及します。データをグラフに表示したり、パレート図や特性要因図を活用します。ポイントはなぜ起きたのか、その原因は何か、さらにそのなぜなぜを追及していきます。例えば、その不良の原因は部品を取り違えたため、さらにその原因は、似たような部品が並べて置いたあったため、さらにその原因は区別がしにくい部品であっため、さらにその原因は、仕様の異なる製品が多いためであった。改善案の検討結果、対策として製品の型式記号をその部品に刻印することによって部品の取り違えを防ぐことにした。というようななぜなぜ追及を行うことが大切です。
B改善案の作成
問題解決の根本原因を把握したら、その対策案をいくつか検討して、どれくらい費用がかかるのか、その効果はどのくらいか、実施の容易さなど多方面から検討します。その結果から最終的な改善案とその実施方法を立案します。
C 改善案の実施
改善案の実施計画に基づき、対策を行います。この時、作業の変更や設備や治具の変更を行った場合、最初はうまくゆかないことが多いものです。慎重に行い、時間がかかっても習熟は進めばうまく実施できるようになります。すぐに結論を出さないことも必要です。
D実施結果の確認
改善案の成果を確認します。データで効果を数値的に把握することです。問題が完全に解決しなかった場合、さらに、次の手を検討します。なお、解決に結びついていない場合は、もう一度現状分析からやり直します。
E歯止め
問題が解決して、改善案の成果が出た場合、作業標準書や設計図面、その他の標準書などを変更や改訂しなければなりません。なお、可能ならば、金額的な成果を算出したいものです。このような活動の経過と成果を記録しておき、今後の教育などに活かしていきます。
5.2 不良低減活動
職場の工程の不良低減を取り上げる場合の改善手法について述べることにします。
(1)取り上げる項目と目標の設定
何故この不良項目を取り上げるのかその理由と低減目標を設定します。この場合、工程で発生している不良のデータを見える化することが先ず第一ステップになります。
(2)取り上げる不良項目のデータを分析する
データが不足するときは、追加して記録するようにします。さらに、不良発生の原因を分析します。その分析は先に述べた4Mから検討すると良いと思います。どの問題を取り上げるか検討する段階では、パレート図又はABC分析等で優先して解決すべき問題を取り上げま。
(3)工程内の検出と流失の状況把握
取り上げた不良が発生した製造工程で発見できなかったか、また次工程(又は下流工程)に流失したか、その状況と原因についても検討する必要があります。製造(組立)工程での品質検査は問題なかったか、なぜ次工程以降に流失したのかの原因分析も行う必要があります。
(4)不良原因の分析
よくいわれるように、なぜなぜ分析で原因を追及していきます。さらに、特性要因図を作成して、どの要因が不良発生に大きく影響しているのかを検討します。原因は一つとは限りません。2〜3点を取り上げることもあります原因が明確になれば、その対策や改善案も的を絞りやすくなります。
原因追及の考え方の一つに「理想的な作業方法」を考えてみることです。原理原則の沿った作業なのか、何がそんな作業をさせているか、しなければならないのかを別の視点に立って検討してみることです。
(5)改善案の作成
改善案は、作業の変更や設備、治具などの変更、改造などが必要になることが多いものです。したがって、改善案はそれを実施するまでに時間がかかる場合が多いので、そのような時は、暫定案を先に実施し、恒久案は必要な準備が終えたから実施するという二段構えで実施することもあります。
ところで、改善案(対策案)は一つとは限りません。問題の内容によっては、2〜3案を検討して、優先順序をつけて実施する場合も起こります。
(6)改善案の実施
改善案は、実行計画を作成して実施します。改善案の内容によって、準備作業(例えば治具の製作、改造など)、具体的実施項目を日程表と共に作成します。
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上図は、ガントチャートで作成していますが、計画と実績をこの表の中に記載していきます。
<ガントチャート:Gantt chart>
米国のガントが考案したといわれているもので、いろいろな日程を目に見えるようにした図表です。縦軸に作業項目、横軸に日にちや年月を示して、棒線で開始と完成日を示すようになっています。なお、計画の棒線の下に実績を記載すると計画と実績のずれが明確になり、今後のデータとして活用できます。このガントチャート図はわかりやすいので、よく使われています。
(7)結果の確認
改善案が実施されるとその結果を確認します。効果が見られればその改善効果をデータで確認します。効果が足りない又は効果がない場合は、次の手を検討することになります。何事にも最初はなかなかうまくゆかない場合も多いので、作業や設備などの習熟も見ながら、改善効果を判断しなければなりません。効果はなるべく数値で測定するようにします。不良率がいくらになったか、作業時間がどれだけ低減したかなど効果の測定も大切なことです。
(8)再発防止
再発防止のため、作業標準書の改訂や設備や治具の変更の場合は、しっかり図面の変更を行なわなければなりません。製品の設計変更が必要な場合は、設計図面の変更を行います。
6.ポカヨケ
不良を出さない、作らない対策の一つとして、ポカヨケ対策があります。これは、作業者の作業ミスを防ぐ対策といえます。次にその事例を記載いたします。
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最近Iotに関連して、いろいろなセンサーの活用が増えています。ポカヨケにもこのセンサー類を作業に活用することが増えてくるものと思います。
7.QC7つ道具
品質改善でよく用いられるQC7つ道具については、別項で述べてありますので、参照してください。
8.初期品質の確保
新製品の立ち上げ、新自動設備の稼働、金型治具の新製、などの場合、最初の製品の出来ばえが大変重要になります。したがって、特に念入りに品質の作りこみを行わなければなりません。日常の管理とは別に重点的に管理する必要があります。このような取り組みを初期流動管理といいます。
8.1 新製品立ち上げ品質
新製品や旧型から新型へのモデルチェンジなどにおける生産立ち上げは、ものづくり工場の大きなイベントです。生産開始段階では、製品の品質、コスト、納期(生産量)がなかなか目標通り達成できないのが実情です。特に。品質の確認が不十分だと新製品販売直後からクレームが多発して、リコール(製品回収や修理)が必要になり、企業にとって大きなマイナスとなります。新製品の立ち上げ段階では、作業者はもちろん、新設備も初期段階のトラブル(初期故障)が発生して、生産品質にも大きな影響を及ぼすことがあります。このような場合には、問題点を一つ一つ改善しながら生産数量をあげていくようにします。立ち上げ段階では、いきなり生産量を増加させることは、注意しなければなりません。
8.2 新設備の立ち上げ
新設備は、初期故障の問題に対処しなければなりません。特に、設備補修に当たる作業者の安全や設備操作する作業者の操作の習熟に全力をあげることです。設備の停止が少なくなれば、生産は順調に上がってきます。さらに、設備の中に組み込まれている治具、搬送装置の改善にも注力しなければなりません。新設備の立ち上げ段階では、組立部品や材料精度、治具精度、搬送装置の位置ずれ、各種センサー類の検知不具合などの問題が発生します。
8.3 立ち上げ段階の人材育成
新製品やモデルチェンジは、いろいろな新技術、新設備が導入されます。したがって、監督者としてこれに対応できる作業者の育成が重要になります。このような機会に部下の育成を図るチャンスでもあります。IoT(Internet of Things:アイオーティ)がどんどん取り入れられる時代ですから、日頃から適任者を選び、設備メーカーの取り扱い訓練に派遣する、技術講習に参加させる、関連する外部講習会に出席させるなど上長を動かし、積極的な対応を取りたいものです。
8.4 初期流動管理とは
初期流動が開始されるまでに行うべきこと、生産開始後に行うべきことがあります。初期流動管理は、次のような項目をクリヤーしなければなりません。ここで述べる計算式は計算に関する項目にまとめて示してありますから参照してください。
(1)新製品の測定合格率
新製品立ち上げ品の製品を測定検査して、公差内に出来ているかどうか合格率を把握します。公差を満足しないすなわち不良個所について、その原因を掴み対策することが先ず必要になります。新製品の多くの測定ポイント(ZYZ寸法)すべてが合格するには、時間を要します。この合格率がどのように推移するか、合格率の目標を達成するように取り組みます。
(2)不具合対策率
生産立ち上げ日程に合わせて、設備、治具、金型、などの不具合点(項目を列挙する)の改善(対策)日程とその進捗を管理します。優先順位や項目の重要性ランクなどを取り決めて行うことも必要です。
(3)納入品の合格率
新製品の外注した材料や部品の品質も不具合が起こるのは社内工場と同じです。不合格率の対策項目とその対策日程を外注メーカーと協議し、推進していきます。新部品の合格率が低いと当然納期(納入率)に大きな影響がでます。
(4)設備稼働率(ライン稼働率)
新設設備(改造も同じ)の稼働率は、初期段階では大きな問題です。新規の設備(付属設備も含む)は、すでに述べたように初期故障という不具合が多発します。その原因で設備が順調に稼働しない事態が発生します。設備の工場搬入前や工場試作段階でいろいろな不具合は解消しておかなくてはなりません。この段階では、材料や使用する部品精度は今一歩ですから十分な検討は出来ないという事情もあります。設備の問題の改善を急がなければ、製品をつくれないことになります。
(5)工程能力指数
工程の能力を把握します。これは、製品の検査データを使ってバラツキと平均値を統計的な手法で算出することをいいます。工程能力指数が1.33を超えることが目標になります。合格率が低いということは、公差より外にデータがバラツキが起きていることですから、工程能力も低いという関係があります。。
(6)作業工数倍率
標準時間に対して、実際の工数がどの程度多く要しているかを算出します。一般的には最初の段階は数倍を要するというのが通常です。この原因は、作業の習熟遅れだけではなく、部品の精度不良、設備や治具の精度不良などの要因が作業工数に大きな影響を及ぼしています。
8.5 習熟について
何事も最初の仕事は、うまく行かないものです。出来ばえもよくないし、時間もかかります。このような新しい作業(一般の仕事でも)には、習熟するための時間が必要であるということを知っておくことです。うまく出来ないと悲観したり、諦める必要はありません。日ごろから、職場の作業についてどの程度の習熟が必要かを掴んでおきましょう。なお、生産に関する項目でくわしく習熟について述べてあります。
8.6 外注部品の品質改善
外注された新製品の部品精度がなかなか上がらなく、工場の生産に大きな影響を与えることがよくあります。部品の納入が遅れラインストップすることもめずらしくありません。このような場合、メーカー任せにすることなく、技術部門は積極的にメーカー支援を行うべきです。必要に応じ、監督者も不具合の具体的状況や問題点(精度不具合点)を説明するなど協力することです。部品の測定基準、検査規格(公差)など社内基準と調整することも起こります。新製品における新技術の場合は特に支援が求められます。
9.QCサークル活動
私の現役の技術者であった1960年代は、全社的な品質管理活動(Total Quality Control:TQC)が盛んでした。特に、現場の監督者を中心としたQCサークル活動は全社で発表会や全国的なQCサークル大会に参加するなど大変活発な活動を行いました。
9.1 QCサークルとは
現場の作業者が5〜6名でグループをつくり、職場の品質問題を中心に全員でいろいろな問題の改善活動に取り組みました。少集団活動とも呼ばれて成果を競い合い、職場の改善提案に大きな役割を果たしました。技術者であった私は、取り上げた問題の技術的な解説やアドバイスをする役割を求められました。
9.2 QCストーリー
問題の解決手順として、当時盛んに使われた手法が「QCストーリー」といわれる改善の進め方でした。この手法は、現在でも仕事の問題解決の手段として使われています。
<QCストーリー>
ステップ1.取り上げる問題(改善テーマ)の選定
ステップ2.取り上げた理由(選定した理由)
ステップ3.目標の設定
ステップ4.活動計画の作成(日程や関連部署等との連携)
ステップ5.現状の把握(データによる把握)
ステップ6.データの分析(QC7つ道具の活用)
ステップ7.改善案の立案(2〜3案)
ステップ8.改善案の実施
ステップ9.効果の確認(改善前と後の比較や効果額等)
ステップ10.歯止め(標準書の改訂)
ステップ11.残された課題や今後の取り組み
ステップ12.活動の反省点など
9.3 QC勉強会の実施
現役時代、QCサークルを推進するにあたって、終業後約2時間、10回ほど勉強会(当時2交代制でしたので延べ20回)を行いました。また、技術者、スタッフ、監督者が講師となって、事前の準備やテキストを使って講習会を行いました。当時、製造課の作業者やスタッフは約100名でした。QC手法などの品質管理の技術的な説明は、技術者が講師となって実施しました。当時は、自主的な勉強会ということで、軽食が提供される程度でしたが、熱のこもった講習会でした。
勉強会の主な内容は、品質管理の基礎知識、職場の問題解決のやり方、QCストーリーの説明、QC7つ道具の具体的事例とその説明などでした。
9.4 QCサークル事例発表会
定期的に職場のQCサークル事例発表会を行っていました。さらに、QCサークル工場大会、全社大会が行われました。優秀なサークルの評価を得ると、これらの大会に参加できました。QCサークルの全国大会に参加することが一つの目標にもなりました。
9.5 品質意識
QCサークル活動は、職場の品質意識を高めることになりました。さらに、改善に対する意欲も出てきて、職場の提案もしやすくなってきたと思いました。このように作業者自ら問題意識をもつことは、その後のものづくりの品質を高めていったと今でも感じています。このように、現役時代に学んだ問題解決の実経験から得た知見は、各項目の中で分かり易く説明してあります。
10.品質マネージメントシステム
ものづくり企業では、製品の販売(納入)先に応じて、いろいろなマネージメントシステム(Management System:MS)の認証が求められています。現在では、統合マネージメントシステム(ISO9001:品質、ISO14001:環境、ISO/TEC27001:情報)、自動車関係のISO/TS16949(IATF16949)、医療関係のISO13485などがあります。
10.1 認証における監督者の役割
監督者は、これらの認証で定めれらたマニュアルや手続き(手順)にもとづき作業を実施しなければなりません。さらに、実施した記録が必要なものもありますから、認証された規定やマニュアルにそった仕事を行う必要があります。
10.2 内部監査
企業では、内部監査が適宜実施されます。認証されたプロセスが有効に機能しているか、すなわち実行されているか、さらにその成果は目標通り上げられているかなどを監査を実施しています。監督者はこれらの監査業務に協力して、現在の現場の作業が規定通り遂行されているか監査によって確認することができます。不適合な項目は、改めなければなりません。
10.3 軽微な不適合の問題
工場の現場を観察すると、よくあるのは記録の不備です。ある日のデータがかけている、記録がない、記録者が不明、日にちがない、上司の確認印がない、記入欄が空白のままなどいろいろな不備が見かけれれます。監督者が日常のチェックが問われます。
10.4 作業者の作業に対する取り組み知識
認証されたMSにおける内部監査でよく見かけるのは、監査員の質問に対する作業者の取り組みが問われることです。例えば
・この作業の目的は何ですか?
・不良が起きた時どうしますか?
・(設備操作で)異常が起きた時どうしますか?
・(機械が)故障した時どうしますか?
・今日は何個生産するつもりですか?
・(組立作業で)部品の不良が見つかった時どうしますか?
・(自分が)作業ミスを起こしたとき、どうしますか?
・(加工品の)検査は、何を基準に行うのですか?
・何故素手で作業しているのですか?
・安全にはどのような気を配っていますか?
このような質問に答えられるように、作業指導を行うことが求めれらます。
10.5 作業者の力量
作業者(場合によっては監督者も含む)の力量が適合しているかが問われます。例えば
・製品の組立や加工の知識と技能(固有技術も含む)
・検査の知識と技能(検査具も含む)
・使用する設備や機械の知識とその技能
・一般的にいえば、4Mについての必要な知識と技能ということができます。それぞれの技能の具体的な内容やその求められるレベルを確認しておかねばなりません。また、そのレベルは、認証のマニュアルに定められます。
10.6 監督者の力量
監督者の力量と考えられる内容は次のようなものがあげられます。
・品質確認力(検査など)と測定機器の管理力
・不適合の是正処置ができる力
・監査で指摘された問題項目の改善力
・社内規定や法律で定められた資格などの知識と順守力
・文書類の記録と保存ができる能力
などがあげられます。監督者として、自分自身の力量を高める自己啓発が必要になっています。
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