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 地下鉄電車の脱線
〜作業終了後の点検問題〜

 2019年6月6日 横浜地下鉄で始発電車が駅を出発したところ、電車の車両が脱線したと報道されました。当然電車はストップで大勢の通勤客等に影響が出ました。脱線の原因は、夜間の保線作業に使用した道具を線路上から取り忘れたためであるといいます。このような作業終了後の置き忘れ問題はよく起こります。手術で置き忘れた手術器具やガーゼ類、火の後始末が不完全で、残り火が発火し火災の発生、溶接作業後溶接の火花から着火、たばこの吸い殻から発火など様々な事件がありました。最近でも、パリのノートルダム大聖堂の火災は、現場に落ちていたたばこの吸い殻かも知れないようです。修理工事中で屋根裏は木材で出来ているので火の回りが早かったと報じられています。
 作業終業後の点検は、おろそかにできません。現場の監督者の責任は重いものです。「人間は忘れることで生きている」と思って間違いありません。病気で忘れるのではなく、自然に忘れるのです。監督者はこれを意識して、日常の対応を行う必要があります。よく使われるのは、「終業点検チェックシート」です。重大な問題発生が予想されるような点検項目のチェックを行って退社するようにしなければなりません。今回のような置き忘れ防止は、日常の業務としてチェックシートを作成して、確実に点検して作業終了させるなどの対策を取らなければなりません。ただ、重要度(危険度なの高い場合など)の高い項目の点検は、作業者一人に任せるのではなく、二名によるダブルチェック(作業者と責任者)、二度チェック(作業者、最終退出者など)など機械的なチェックにならない工夫も必要になります。
(2019.6.6)


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 工場火災の損失
〜日常点検の地道な取り組み〜

 2023年10月、ある大手自動車部品メーカーの工場で大きな爆発火災が発生しました。このため、部品製造ラインは停止となり生産ができなくなりました。当然、納品はストップし、この部品を使って自動車を組み立てる自動車メーカーの組立ラインは欠品となり生産停止となってしまいました。このライン停止による損害は、数十億円とも数百億円とも報道されていますが、大きな損失が生じたことはいうまでもありません。

 工場火災の原因は、報道によると部品の製造工程にある乾燥炉が爆発したためということですが、テレビで見たところ工場の屋根が大きく損傷していました。この爆発火災の真の原因は、今後調査がされると思いますが、ここでは原因の追求ではなく、ものづくり工程の日常の点検についてその重要性に気付いて欲しいと思います。

 工場では、いろいろな工程で乾燥、焼き付け、加温、溶接などに燃料(灯油、重油など)や可燃性ガス(都市ガス、LPG,など)が使用されています。このような危険物については、法令で定める資格者や企業で認定する資格者による取り扱いが定められています。工場の災害発生の要因となるような危険物を扱う生産工程では、日常の点検も非常に大切な作業になります。工場での災害防止のためには、この日常の点検を疎かにしないことです。

 日常の点検は、チェックシートを作って行うことです。誰が点検を行うのか、点検項目や点検時期、点検作業方法などを標準化して定める必要があります。そして、点検時に異常が発見されたら、直ちに修理や交換などを行うような仕組みを作っておかなくてはなりません。

 日常の作業時には、異常な音(異音)、異臭、突然の振動、高熱の発生などに作業者が気づけば直ちに上長に報告する仕組みも大切なことです。また、目に見えるところの異常の発見はし易いものですが、目に見えないところは気づかないものです。例えば、設備や機械の背後にある配管やダクト類には気をつけなくてはなりません。特に、天井設備や屋根裏配管は点検困難な場合が多いだけに見逃さないようにします。

 可燃性のガスのなどの供給配管では、接手部分からの漏れ、バルブ類の締め忘れによる漏れがよくあるケースです。燃焼物の排気ダクト類はその排気ダクト内に付着した、コミや燃えガラなどいろいろな可燃物材が付着していることが少なくないので、定期的な清掃をするなどの清掃基準も重要な危機管理といえます。

 ものづくり工程の設備や機械の点検は、作業者による始業点検、保全部署の行う保全点検、機械の精度を確認する専門業者が行う精度点検、職場の安全管理者や技術者などが行う安全点検などの取り組みが必要です。社内で点検に関する規定を設けて実施したいものです。

 工場火災は一度でも発生すれば甚大な被害を被るほか、生産停止によってお客さまへの納品がストップするなど大きな損害も発生します。今回の部品メーカーの工場火災から、地道な点検をしっかり行うことの重要性を学びたいものです。

(2023.11.6)