固有技術の知識

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 自動車の組立ラインです

 アーク溶接ロボットの例です
  溶接ロボット
(出典:安川電機
株式会社

 右図のロボットは、代表的な溶接ロボットです。現在では、このロボットが溶接作業を自動で行っています。これから、このような産業ロボットの活躍するものづくりが急がれています。







 

 目  次

1.製品に関する知識
1.1 製品の劣化
1.2 ボルトナットのゆるみ
1.3 クレーム
1.4 製品設計時の検討事項
1.5 設計図面の知識

2.固有の技術とは
2.1 固有技術の例
2.2 生産技術
2.3 ものづくりに共通する固有技術の内容

3.ものづくりの加工技術の概要
3.1 機械加工
3.2 プレス加工
3.3 冷間鍛造
3.4 熱間鍛造
3.5 鋳造
3.6 ダイキャスト
3.7 樹脂成型
3.8 溶接
3.9 焼結
3.10 表面処理
3.11 熱処理
3.12 接着
3.13 転造その他


4.製品組立
4.1 組立とは
4.2 組立の工法
4.3 組立治具
.4 部品の位置決めのポイント
4.5 組立技術のポイント


1.製品に関する知識
 
自然界の生物でも、動物でもよく形あるものは、変化するといわれています。端的にいえば、世の中で永久に初めの形をそのまま保つものはありません。ものづくりの製品でも例外ではありません。

1.1 製品の劣化

何事も時の流れがあります 製品の劣化とは、時間的な経過とともに、性能や機能の衰えや形状の変化などが起こることです。この結果、製品設計の意図するものが発揮できなくなることです。この劣化をよく理解しなければなりません。職場で使用する設備や機械も同じことですから、注意を払わなければなりません。

(1)摩耗(損耗)
 製品の回転部分のような部品どうしが接触する部位が少しずつ
摩耗して、音や振動が発生したり、強度が減少して折損したりすることです。摩耗対策として、熱処理など材料の調質が行われています。焼き入れ硬度の過不足が原因で事故が発生した例もあります。摩耗部分は通常は見えませんから分解点検が必要になります。

(2)腐食(錆び)
 日常よく見かける問題の一つです。外観でも発見し易いだけに見逃される傾向にあります。ご存知のように、
錆びは空気中の酸素のよって鉄が錆びる現象です。これを防止するため、表面処理を行います。塗装はその代表的なものですが、メッキ(クロムメッキ、銅メッキなどその種類は多い)も行われますが、コストが高いため、使われるのが限定的です。なお、錆びにくいステンレスやアルミ、樹脂材料などに置き換えることもあります。

(3)変色、退色
 製品の色や印刷文字が、年月の経過と共に、だんだん落ちてくることを退色(変色)といいます。この現象は日常皆さんも経験していることです。この原因は紫外線が原因といわれていますから、特に直接日光に当たる製品はその対策が必要になります。樹脂部品、塗色の色、印刷インクなどによっては、その影響を受けやすいものには注意が必要です。

(4)疲労(耐久性の低下)
 
繰り返し荷重や同じ動作(例えば振動)などを受ける部位が、疲労現象を起こして強度が低下したり、形状が変化したりして折損や焼損(電気製品など)することです。よく発見されているのは、疲労が原因で亀裂が広がり、異音や折損が発生しています。このように耐久性が低下してしまいますから、定期的な点検が必要になります。外観的には、亀裂、変形、折損があります。内部の亀裂や変形は目に見えないため、問題が起きてから発見されるることもあります。

1.2 ボルトナットのゆるみ
 
ボルトナットのゆるみは、注意しなければならない作業の一つです。ゆるみは、ナットが戻り回転する現象ですが、その原因はいくつかあります。重要部位のボルトナットの締め付け作業には注意が必要になります。さらに、設計的にはゆるみ止め対策を行います。

(1)製品の振動や衝撃
 振動が多く発生するようなところで使用するとボルトナットは、振動によって緩み易くなります。溝付きやナット割ピンなどでナットのゆるみ(脱落)を防ぐ対策が必要です。

(2)部品どうしの馴染み
 商品を使用する時間の経過とともに部品どうしが馴染み(密着)部品間に生じていた隙間がなくなりナットゆるみが生じます。ゆるみ止めボルトやワッシャーは欠かせません。重要な部位は、定期的な増す締め(ボルトナットを再度締めること)を行うことが必要です。

(3)トルク不足
 作業の不良で締め付けトルクが不足するとゆるみの発生が促進されます。トルクが指定されている重要なボルトナットは、規定のトルクで締め付けたことを確認するマーキングをするなどの対応をします。

(4)部品の変形や陥没
 締め付け部分の部品の強度が足りない場合、締め付けによって、部品どうしが変形やボルトナット周辺が陥没するなどが生じます。締め付け部品の補強など設計変更を行う必要があります。

(5)高温状態になる場合
 
商品を使用中に、摩擦熱などでボルトナットが高温状態になると熱による膨張収縮の繰り返しによってゆるみが生じます。このような現象が起きないか、設計段階で事前の検討が必要です。

(6)作業不良その他
 
作業ミスによで締め過ぎると、部品の変形を起こしたり、ボルトが変形(ひどい場合は切断)などを生じさせるようなことが起きるととゆるみが発生してきます。ここでは、ボルトナットについて述べましたが、その他のビス類も同様な事態が生じることがありますので、作業には注意が必要です。

1.3 クレーム

クレームの内容は製品の改善のヒントになります 設計段階での想定外のお客さまの使用方法や使用する環境(例えば、高温多湿、極低温)により、製品の問題が発生して、クレームが起きることがよくあります。このため、製品の使用方法や使用する時に守るべき注意事項をお客さまに知らせるようにしています。法律の定める事項などが商品に添付されている使用説明書や注意書きなどにいろいろなことが書かれています。クレームについては、迅速な調査と回答を行うべきです。製品のリコールを行うなど法律で定めれている事項もあります。クレームは、その保証などの費用が莫大になるケースもありますから、設計段階での検討が重要です。製造上の問題は、監督者も責任を負う場合があることを知っておきましょう。

1.4 製品設計時の検討事項
(1)デザインレビュー(DR:Design Review)
 
デザインレビュー(以下DRという)は新製品の設計に問題がないか、将来発生する不具合予測などを検証する作業です。簡単なものは寸法、公差の妥当性、材料、材質の選定などから、性能、機能、耐久性評価など多岐にわたることになります。このような内容はSE時に問題が発見されたものは、その場で設計にフィードバックして改善することができます。このようにDRは設計の妥当性を評価するといっても過言ではありません。 なお、どんな製品設計においても、設計者は何らかのDRは実施していると思います。この場合、設計者や設計部門だけで行うのではなく、関係部門が参加するすることが重要です。その企業の知見や経験など英知を集結することがより成果を高めることになります。なお、製品のコストは、設計段階で決まるといわれていますので、コスト面からのDR評価が強く反映され勝ちになりますので注意が必要です。

(2)故障発生の未然防止
 (DRBFM:Design Review Based
on Failure Mode)
 DRBFMは端的にいえば、
クレームの発生を事前に防止する手法です。この場合、新製品設計は設計作業が進行するに従い、仕様の変更、追加や問題点の改良などによるさまざまな設計変更が生じるので、設計の進捗に応じてDRを行うことが必要です。例えば基本設計段階、詳細設計段階(SEはこの段階で行うことが多い)、設計完了(出図)段階、工場出荷段階といったように各段階で行うことです。DRBFMは製品を構成する部品、材料、組立品、完成品などの不具合(故障、クレーム、不良品など)の発生が生じることがないかどうかを検証することになります。


1.5 設計図面の知識
 監督者として、設計図面を読む知識を持たなければなりません。2D図面のほか、現在は3D図面(CAD)ですからパソコンを操作して
設計図面(画面)を理解する知識を持つ必要があります。その他、組立治具図面、設備図面、その他職場で使用する機械図面なども読めること、その内容を理解することが必要です。このような図面を読んで理解する力は、これからの監督者に要求されることです。最低でも必要な理解力は、作業に関する部分であり、寸法や機能、注意事項や特記事項などを必要な事項を自分で確認できる程度の理解を期待したいと思います。

2.固有の技術とは

自分の会社の固有技術は何かを考えてみましょう どんな企業(ものづくり企業以外の販売会社、病院、学校、行政機関なども同じです)でも,その企業独自の固有の技術を持っていると私は考えています。そしてそれを活かしながら、両輪としての管理技術も同様に存在しています

2.1 固有技術の例
固有技術の発展は企業の発展を促進します ものづくりの固有技術の専門家は、技術士などありますが、それぞれの業種によりその名称は異なります。  例えば、近くのかかり付けの病院のいわゆる「固有技術」というものについて考えてみました。
 ・病気の診察、診断
 ・手術
 ・検査(X線、CT、MRI,、胃カメラなど)
 ・看護
 ・リハビリ
 ・投薬
 ・その他専門とする病院によってさまざまな技術があります。この病院の技術が高く、病気が治癒していくと評価もあがり、信頼できる病院ということになっていくと思います。この
病院の専門家が医師になります。医薬関係では、薬剤師と呼ばれていることは、ご存じの通りです。

2.2 生産技術
 ものづくりの技術の一つに「生産技術」(製造技術ともいう)という言葉があります。これは、ものづくりの技術力をよく表現する言葉です。いろいろな説明が書物にありますが、具体的には、加工技術と製品の工程設計技術がともなった「ものづくりの技術」のことであると思っています。生産技術力が高いということは、その企業の技術力が高いレベルにあることを示していると考えます。

2.3 ものづくりに共通する技術の内容
 ものづくりに共通する技術は、設計技術と生産技術ですが、そのポイントを説明します。

(1)製品設計
 製品の「設計」は、企業の持つ固有技術を具体的な製品の形にするものです。この企業の持つ技術を生かす
製品の設計は、企業独自のノウハウ(Know-how)といえます。設計には、新製品の開発や実験、設計試作などが含まれます。新製品(商品)開発は、市場の先を見ながら、企業は常に行っています。設計部門は、企業にとって重要な部門であることはいうまでもありません。

(2)製品の材料知識
 製品に使用される材料は多種多様ですが、製品を構成するさまざまな
材料の性質はもちろんその強度、試験、検査法などの高度の材料に関する知識が必要です。技術の発展と共に、いろいろな新素材が開発されています。同時にこれを使用した新製品も生まれています。

(3)工程設計
 製品をつくるための工程設計(工程計画ともいう)は、作業の手順(工程)を計画したもので、工程の条件や使用する機械などを設定したものです。同時に、寸法公差や検査条件など品質の条件を設定したものが「QC工程表」と呼ばれているものです。製品をつくるための技術条件と品質条件を明確に設定します。なお、工程計画の名称は、企業により工程表や手順表などと呼ばれています。

(4)設備計画
 中長期の生産販売計画における生産計画(生産数量)から、設備計画を行います。社内工程で加工や組立を行う設備や機械を調達するほか、
工場のレイアウトなどを決定します。この設備計画で、自動化設備やロボットなどの製作や購入計画も行うことになります。企業外部に対して、設備投資計画などで発表されています。

(5)資材調達計画
 製品に使用する材料のほか、社内で加工しない工程や外注で加工する又は部品として購入するなど調達計画を行います。熱処理や表面処理(メッキなど)は、専門メーカーに外注することが行われます。
資材調達は、生産日程や納期などに大きく影響する企業の重要な機能ともいえます調達計画では、発注先の選定が大きな課題の一つです。最近では、自然災害で納入部品や材料がストップする事態も多発しており、このような危機管理も重要視されています。

(6)新製品の立ち上げ
新製品の生産立ち上げは大変なエネルギーを費やします 新製品(モデルチェンジを含む)の立ち上げは、監督者の大きな役割になります。新製品の新しい作業は、作業者の訓練を行う必要があります。さらに、新設備は設備メーカーでの取り扱いなどの研修が必要になります。QC工程表にもとづく作業準備は監督者の苦労するところです。技術者の支援をもらいながら、生産作業の準備を行います。新しい作業は、なかなかうまく行かないことが多いので、焦らず一歩一歩進めることです。このような作業者の訓練のほか、部品レイアウト、工具、測定具の準備、作業に使用する各種の副資材などの準備(手配や取得)とやるべき仕事が山積しています。一番の問題は、生産開始段階での品質です。なかなか合格率が上がらず、その設備対策や作業改善が急がれます。さらに、必要に応じて関係者の支援を求めるなど監督者の役割を果たすことが求められます。

3.ものづくりの加工技術の概要
 ものづくり企業の固有技術である
加工技術の概要を列挙します。企業は、独自の強みとする加工技術を持っています。加工技術には、必要とする設備や機械類も含まれます。一般的な固有技術には、いろいろな技法がありますが、ここでは、監督者として知っていてほしい範囲で概要を説明します。

フライス加工 機械加工はものづくりの基本となる技術です

3.1 機械加工
 
旋盤、NC機械など用いて、材料の切削、穴あけ、研磨など行う加工方法です。加工できる形状はいろいろなものができます。ネジを切ることもできます。高い精度を要求される加工としては、研磨加工になります。機械加工は、切削等によって材料を無駄に捨てる(切り粉)部分が出たり、加工に時間がかかるので、コスト面からはなるべく機械加工部分を減らす工夫が必要です。高い精度が要求される部分の加工に採用されます。

3.2 プレス加工
プレス加工は材料加工のスピードが速い特徴があります プレス機械(例えば、小型の5トン程度から大型の1000トンを超えるものがあります)を用いて鉄板を切断、曲げ、絞り、成形、穴あけなどを行うものです。加工スピードが速いので、安価でかつ量産部品の加工に適しています。また、鍛造加工をプレス工程に組み入れて、より精密、複雑形状の加工技術開発が進んでいます。さらにプレス加工では、一つの金型の中に十数工程を加工できるようにした順送プレス加工があり、効率と精度の高い加工ができます。なお、プレス加工は使用する金型の製作費が高いので、量産品でないとコストが高くつきます。金型を如何に安く作るかがポイントです。プレス加工の工程数は4〜6工程が多いので、このようなプレスラインでは工程間の搬送にロボットを組み合わせた自動化が進んでいます。

3.3 冷間鍛造
 冷間鍛造は、鍛造機械で常温状態の材料を
鍛造による成形加工を行うものですが、代表的な加工品は、ボルトやナットです。さらに、大小さまざまなピン類の量産がコストも優位です。なお、鍛造工程は成形スピードが早いので、量産に向でコスト的にも優位な工法です。鍛造部品は、小物から中物部品までいろいろな部品が製造されていますが、複雑な形状加工には限度があります。高精度を要する部品は、鍛造加工で出来るだけ製品に近い形状に成形して、機械加工部分を少なくする工夫をすることによりコストを下げることができます。材料は、鉄鋼以外にアルミや銅が使われています。加工精度も良いので、量産品の加工に適しています。

3.4 熱間鍛造
 熱間鍛造は、材料を加温して鍛造成形するもので、鉄、アルミ、真鍮などの大物や厚物などの部品加工に用いられています。鍛造加工ですから、大型の鍛造機械や金型を用いてプレス加工のように加圧加工(鍛造)を行います。加工時に高熱で行うため、複雑形状の加工が可能で、さらに、鍛造を行うため、材料の機械的な強さや硬度が得られる特徴があります。
加工精度は低いので、精度を要する部位は、機械加工を追加するようにしています。また、高熱作業や大型機械の騒音など作業環境が良くないので、作業環境対策に十分配慮しなければなりません。

3.5 鋳造
 鋳造は、鋳物品と呼ばれている加工品でざまざまな鋳造法があります。鋳物材料には、鋳鉄、鋼、アルミ、銅などがあります。一般的な鋳造は、鋳物用の特別な砂を用いて鋳型をつくり、そこに溶融金属を流し込んで(注湯という)、冷却後鋳型をバラして製品を取り出すという昔からある工法です。製品は一個から数万個まで
生産量にかかわらず製品をつくることができるという利点があります。なお、鋳造は製品ができるまでに時間がかかるのが難点です。さらに、製品の形状にも制約があり、機械加工も必要なのでコストがかかります。鋳造は、品質的には、溶融金属が冷却して固まるので、製品の体積が収縮することになるので、精度的、品質的(空洞、亀裂などの欠陥に注意しなければなりません。
 なお、小物品で形状の複雑な部品では、
ロストワックス(Lost-Wax)鋳造法があります。これはワックス(ろう)で製品の形を作り、その周囲に鋳物砂をまぶして鋳型を成形します。その後、熱でこのワックスを溶かし、その中に材料を流し込むという方法です。現役時代に、部品加工技術開発として取り組んだ経験があります。

3.6 ダイキャスト
 ダイキャスト機械で、アルミ、マグネシュームや亜鉛合金など溶融した金属を
金型に一定の圧力で注湯するなど多くの工法があります。部品精度も高く、製造時間も短いので、量産向きでコスト的に有利な工法です。一般的には、小物や中物部品の量産品に適しています。ダイキャスト工法も鋳物と同じように溶融金属を冷却させるため、いろいろな品質上の欠陥が生じますから、品質検査は重要です。さらに、ダイキャスト金型の設計、部品の形状設計などが課題になります。なお、マグネシュームダイキャストは、軽量であるというメリットがありますが、燃焼発火しやすく、作業時には注意が必要です。

射出成型機樹脂加工品はいろいろな製品の部品に使われています 

3.7 樹脂成型
 
射出成型機でプラスチック原料を加熱溶融して、金型に加圧注入するものです。複雑形状や精度の高い部品が短時間に安価にできることから、日用品をはじめその用途は際限がないといえます。樹脂成型方式にもいろいろな成型加工方式があります。大中物部品は、自動車にも採用が増えているので、精度向上が課題です。

3.8 溶接
スポット溶接ロボットです 溶接は二つの材料や部品を溶融して一体化(溶着)するものです。代表的な溶接として、ガス溶接、アーク溶接、スポット溶接があります。溶接の種類は、数十を超えるさまざまな溶接法があります。自動車工場ではロボット(産業用ロボット)がスポット溶接やアーク溶接を行っています。今では海外でも溶接作業はロボットによる自動化が一般化しています。
 現役時代に最初に行った作業は、ガス溶接やアーク溶接ですが、その後フラッシュバット溶接、TIG(Tangusten Inert Gas)溶接などいろいろな溶接作業を経験してきました。量産工場では、溶接ワイヤーと不活性ガス(CO2)を使って連続的に溶接するMIG(Metal Inert Gas)溶接が用いれられ、自動溶接化されています。

3.9 焼結
 ステンレスやアルミなどを
粉末状にして、プレス機で部品形状につき固めた後、高熱炉で焼く(焼結)ことにより製品ができます。小物品で歯車や軸受品などの特殊部品製造に用いられます。

3.10 表面処理
 めっきは、防錆や装飾などのために、金属や樹脂部品の表面に銅やクロムなど
めっき(鍍金)するものです。塗装は、樹脂塗料を鉄板や樹脂に吹き付け後焼き付けるものです。どの部位にどの程度めっき(めっき厚さ)や塗装(塗膜厚さ)するかがコストに大きく関係します。なお、めっき工場からの廃液による公害が開発途上国では問題となっています。

3.11 熱処理
 鋼材の硬さや耐摩耗性などを
強靭性を高めるために焼き入れ、焼鈍などの熱処理がよく行われます。焼き入れ不良などで不具合問題を起こすことも少なくないので、熱処理の品質管理は特に注意を払うことが必要です。例えば、焼き入れの硬度が低くても、高過ぎても問題が生じます。硬度不足(摩耗)、硬度オーバー(折損、亀裂)で問題が起きた事例はたくさんあります。

3.12 接着
 各種の接着剤を用いて、
同種や異種の部品を固着するもので、構造用接着剤の技術開発とともにその用途は広がってきました。自動車部品や日常生活品でも接着取り付け品が多くなっています。今後、接着材の性能が一段と向上するにしたがい接着工法は、一層広がると思われます。現役時代の1970年頃、構造用接着剤で鉄板どうしの接着組立を行ったことがあります。熱硬化処理が後工程のため精度確保ができず、一部の部分採用で終わってしまいました。

3.13 転造その他
 かしめ、はぜ折り加工、転造(ネジ切り)などその他さまざまな加工法があり、製品が作られています。

4.製品組立
 ものづくりでは、製品の組立作業が行われますので、
組立工法の技術的な要点を整理しておきます。製品によって、組立工法はさまざまですが、その基本的な内容を述べておきます。

4.1 組立とは
 いろいろな部品を組み合わせて、製品をつくること、材料を加工して、部品をつくり、
新たに付加価値をつけることといえます。具体的には、設計寸法(XYZのような三次元寸法)通り部品を位置決めして、ボルトナットなどねじ類や溶接などで、さまざまな部品を順序良く組み付けていくことをいいます。
 
4.2 組立の工法
 次のような
手法を組み合わせて組立を行います。
@ボルトナットその他のネジ類での組付け
A溶接による接合
B接着
Cロー付け(真鍮、はんだなど)
Dヘミング(ハゼ折り)
E圧入やカシメ(リベット)
Fスナップリング止め、キー止め(軸や回転部位の結合)
Gスクリューグロメット、クリップ(内装部品の取り付け)
Hその他上記の組み合わせ

4.3 組立治具
自動車部品の組立治具の例です 製品の組立作業当たっては、一般に組立治具を用いて正確に部品の位置決めをすることがポイントです。特に部品精度が組立品の品質を左右するので、部品製作や組立工程の品質管理が大切です。
 さらに、組立作業で品質に重要な影響を及ぼすものが、
組立治具です。治具の仕様や製作精度、作業性などが重要な課題です。特に、治具は生産数量が増えてくると、摩耗が進み、損傷が起きてきますので、定期点検や補修(メンテナンス)が大切です。

       三次元測定機
 
大物品の測定に用います

 組立治具の精度を確保することが、組立製品の精度に大きく影響します。したがって、精度を確認するため測定する必要があります。その測定器として使用されているのが三次元測定機(Layoutmachine)です。最近はレーザー光線を用いた測定器も採用されています。






 部品の位置決めの例です
 部品の穴を利用した位置決めの例です
 部品の形状を利用した位置決めの例です
 部品の形状を治具で受けています

4.4 部品の位置決めのポイント
 組立治具における部品の位置決めの方法について、その基本的な考え方を述べておきます。

(1)部品A
 部品の形状で位置決めする場合、X面とY面二つの基準面を利用するもの。この場合、Z位置(高さ方向)は仮面を基準面とします。(図は省略)

(2)部品B
 部品の2個の位置決め用の基準穴を使って、部品の位置を決めるものです。この場合、プレス工程は、一度にこの穴をあける必要があります。

(3)部品C
 部品の形状を利用し、同時に基準穴を使った位置決めの方法です。形状を持った部品は、その基準とする部位を受け面(ポストと呼びます)を使うことです。図に一例を表示しました。
 部品Cの形状受けポストは、右図に示してありますが、基準面は相手の部品と合わさる部分が基準面となっています。側面は逃げ面として部品の位置決めの役割は持っていません。部品の組み付けガイドの役割です。ただし、スプリングバックでハの字型に開いている場合は、それを強制するため、正規の形状にセットするようにするため、逃げ面は、廃止します。

4.5 組立技術のポイント
 製品の組立に当たっての重要なポイントをあげておきます。これは、製品や組立治具設計の基本的な原則です。

(1)組立基準の設定
 組立を行うには、その基準(証ともいう)とすべき位置を設定します。一つは
組立の基準(この場合原点というべき位置)と組み付ける部品の証を明確にして設計します。簡単にいえば、どこを基準に組み付けるかということです。

(2)基準部位の精度
 部品の基準面やロケート穴(組立治具で部品の位置決めに使用する穴)を基準にして部品の加工を行います。さらに、この
基準面や穴位置精度は、製品の組立精度に大きく影響しますから公差の設定と加工精度を十分確保しなければなりません。

(3)基準の一貫性
 製品や部品の基準となる部位は、一貫性を持っていなければなりません。部品の加工、部品検査、組立、製品検査すべての工程において、同じ
基準面や基準穴を一貫して使用します。工程によって、バラバラな基準を使用することは、品質確保ができなくなります。もっとも避けなければならないことです。基準が異なると精度測定寸法も違ってきます。何が正しいか分からなくなります。


(4)設計仕様の一貫性
 製品設計、治具設計、工程計画(設備も含む)、検査治具などのそれぞれの
設計仕様における基準の一貫性も重要なことです。共通した基準面や基準穴を使用することが大切になります。

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